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コラムリスト
コラム1.無借金経営ってできないの?
よく友人から会社の借金はどれくらいあるの?さっさと全部返せないの?とよく聞かれます。どうやら「借金がないこと」が良い経営だという考えが根底にあるようです。確かに借金はないほうがよいですが、会社規模によって適正な額であればむしろあるほうが上手くいくことが多いのです。どういうことかというとこれは資金繰りに関係します。
調剤薬局にかぎらず、経営者は資金繰りをどううまくやるかが問題になると言われます。資金繰りとは一体何でしょうか?
例えば調剤薬局でもなんでもよいですが、左の図のような経営状態の会社があったとします。利益が出ているので会社は黒字です。しかもこれは自分自身の給与を含めた人件費を含めて利益が出ているのでこの状態で推移すれば十分に会社は継続できるはずです。
しかし現実にはどうでしょうか?分かりやすく1ヶ月単位での損益に直してみます。会社には前年度の繰越分50万円があるとします。
たとえばこのようにきれいに順番にならんでいれば上手くいきます。
日付 | 会社にあるお金 | |
5/22 | 50万円 | |
5/23 | 売上の回収(1000万円) | 1050万円 |
5/24 | 仕入れの支払い(666万円) | 384万円 |
5/25 | 地代・土地代の支払い(125万円) | 259万円 |
5/26 | 給与の支払い(200万円) | 59万円 |
では何かの都合で売り上げの回収が5月27日になったらどうなるでしょう?
日付 | 会社にあるお金 | |
5/22 | 50万円 | |
5/24 | 仕入れの支払い(666万円)不渡り | -616万円 |
---|---|---|
5/25 | 地代・土地代の支払い(125万円)未払い | -741万円 |
5/26 | 給与の支払い(200万円)給与の遅配 | -941万円 |
5/27 | 売上の回収(1000万円) | 59万円 |
手持ちにあるお金50万で、666万、125万、200万の請求という膨大なお金を払っていかなくてはなりません。自分自身に貯金があればそれを取り崩すという方法もあるでしょう。それがなければ「もう少し待ってくれ。待ってもらえばお金が入る」と説明しますか?どこかで聞いたフレーズだと思います。
確かにその通りではありますし、絶対通用しないとは言いません。しかし基本的に会社取引とは信用の問題です。期日どおりに払うべきものが払えない、不渡りとは会社の信用がなくなったという状態ともいえるのです。それに上手く順番どおりにお金の出し入れがあったとしても売り上げや仕入は常に一定ではありません。今月は入ってくる売り上げ金は少ないのに仕入だけ多く、ぎりぎりでやっているとお金が足りなくなってしまうこともあります。
この会社の例で言えば会社に常に1000万ぐらいお金があるとそんなにひやひやしなくてすみます。1000万借金すると当然ですが毎月利息と返済があります。ただ利率2%で5年で借りたとして月17万円です。上記の666万、125万、200万の請求に比べるとよっぽどましです。
このため例え黒字でも会社は借金をするのです。これを運転資金といいます。売り上げ1億に対して10%程度が借金の標準的な金額だと言われています。
コラム2.大企業は拡大をやめられない?
前回のコラムでいくら黒字経営でも運転資金として売り上げの10%程度の借入金は必要であるとのお話をしました。今回は、それを大企業にあてはめるとどうなるか考えて見ましょう。前回の会社の規模を単純にそのまま100倍にして売り上げ120億円の会社があったとします。大手の調剤チェーンになると特に珍しくはない規模だと思います。
さて売り上げ120億なので運転資金としては12億円ぐらいは必要になります。前回の1億円規模の売り上げで1000万円を借りる程度であれば、担保の金額もそれほど多くなくてすみます。基本的には社長の家や財産を担保にすればそれほど難しくはない金額です。では12億円になるとどうでしょうか。複数の銀行に分割して借りるにせよこれぐらい金額が大きくなると、それだけの担保が必要となります。諸外国と違いそれほど、貧富の格差のない日本で12億の担保にできるだけの財産はなかなかありません。よって担保は社内の財産、具体的には会社所有の店舗や土地などに求めることになります。
会社所有の店舗や土地が増やすとはどういうことでしょうか。つまり店舗数を増やし、会社の財産を増やすということになります。当然拡大するためにはそれだけ資金が必要です。このように会社の規模を大きくしていくと個人の資産ではとても賄えなくなり、借金をするための担保を無尽蔵に増やしていかなくてはなりません。つまり借金をするために借金を続けていくサイクルに陥るのです。拡大しているうちはもちろん良いのですがいつか拡大というのは止まります。規模が大きいだけに止まったときに資金不足に陥ると、個人の資産ではどうすることもできないでしょう。つまり多店舗展開を進める大規模調剤薬局や大規模小売店は拡大を止めることはかなり難しいのです。
しかしながら、拡大が止まる=倒産ではありません。近頃の傾向ではM&Aを実施したりして、再び拡大路線を続けていることも多いです。
このことから考えると、店舗開発や新規立ち上げなどの仕事をしたいと考えている人にとっては大規模チェーンの薬局などが向いていると思います。
逆に店舗の拡大は望めなくても少ない店舗をより充実させていったり、店舗を増やさない形での新規事業を手がけてみたいのなら中小企業のほうがよいかもしれません。
なおこれは調剤薬局など小売店にあてはまる内容で大規模製造業に関しては全くあてはまらないと思われます。
コラム3.エクセルで出来る簡単給与計算
薬局に限らず社長というものは経営方針を考えたり、理念を提示して社員を引っ張っていく、そんな存在だと思われています。実際にそうだと思います。しかしながら、会社が存続していくためには細かな事務作業もあることが事実です。毎日のお金の出し入れを記録し、物を売り、支払う。従業員に給与や税金もきちんと支払わないといけません。勿論、社員が何百人もいるような大企業なら社長が事務的な仕事をすることはないでしょう。しかし小さな会社では社長が庶務課であり総務課であり、給与課でもあります。
うちの会社では薬学部の学生さんやインターンの学生さんなどが実習に来られます。経営のことも勉強してみたいという希望もちらほら聞きます。「起業してみたい」そんな思いがある人なら、理想の会社ややってみたいこと、理念などは何となくでもすでにもっていると思います。今回は、社長の仕事として給与計算の方法を公開してみたいと思います。
例えば以下のような条件で入社した社員の所得税や保険料、そして総支給額はいくらになるでしょうか。
労働時間 | 通勤日数 | 残業 | 雇用条件 | 社会保険 | 雇用保険 | 労災保険 | ||
1 | 正社員A | 給与20万円 交通費:4200円 | ○ | ○ | ○ | |||
2 | 正社員B | 給与25万円 交通費:7100円 | ○ | ○ | ○ | |||
3 | 正社員C | 給与18万円 交通費:12900円 | ○ | ○ | ○ | |||
4 | 準社員D | 時給:840円 交通費:210円/日 | ○ | ○ | ○ | |||
5 | パートE | 時給:800円 交通費:640円/日 | × | ○ | ○ | |||
6 | パートF | 時給:820円 交通費:300円/日 | × | × | ○ |
考えただけで頭が痛くなるでしょうか。でも最初に理解してシステムを組んでしまえば後は楽です。
まずは表の説明をします。便宜的に正社員、準社員、パートなどつけていますが、これは会社ごとの定義であり、必ずしも労働条件によって共通のルールがあるわけではありません。
ただし、右にある1.社会保険、2.雇用保険、3.労災保険にはきちんと定められたルールがあるので加入要件を満たしている従業員には加入させる義務があります。
1.社会保険
社会保険とは健康保険と厚生年金のことですがこれは週30時間以上働く社員が該当します。(大企業は20時間以上)健康保険料と厚生年金保険料は本人と会社が折半して支払うので、本人は半額負担で済みます。これがいわば正社員と非正規社員の格差にもなっています。
2.雇用保険
雇用保険は加入していると失業したときに失業保険や育児休業をとって働けないときに育児休業給付金がもらえたりします。これは社会保険よりも加入資格がゆるく週20時間以上勤務する従業員が該当します。
3.労災保険
最後に労災保険ですがこれは仕事や通勤中のケガの治療費などを補償するものです。ですので、仕事によるケガは健康保険は使えず、労災保険を使うことになります。
労災保険は従業員全員を加入させる義務が経営者にはあります。そして保険料は全て会社負担です。また社長や役員など経営者は労災保険には加入できません。従業員の労災保険は払っても自分は保険に入れないという社長の大変なところです。経営者は別の任意保険に自分で加入するか仕事中には怪我しないように気をつけねばなりません。
〜
さて、給与計算の締め日が過ぎて社員の勤務記録が提出されてきます。以下のような勤務状況だったようです。
労働時間 | 通勤日数 | 残業 | 雇用条件 | 社会保険 | 雇用保険 | 労災保険 | ||
1 | 正社員A | − | − | 3 | 給与20万円 交通費:4200円 | ○ | ○ | ○ |
2 | 正社員B | − | − | 7 | 給与25万円 交通費:7100円 | ○ | ○ | ○ |
3 | 正社員C | − | − | 0 | 給与18万円 交通費:12900円 | ○ | ○ | ○ |
4 | 準社員D | 130 | 18 | 3 | 時給:840円 交通費:210円/日 | ○ | ○ | ○ |
5 | パートE | 92 | 10 | 4 | 時給:800円 交通費:640円/日 | × | ○ | ○ |
6 | パートF | 61 | 9 | 2 | 時給:820円 交通費:300円/日 | × | × | ○ |
正社員のAさん、Bさん、Cさんは勤務日数によって給与や交通費が変わるわけではないので給与・交通費は定額です。したがって残業時間だけ教えてもらえればよいことになります。一方、時間給計算の方はどれだけ何日働いたかで給与も交通費も変わってきます。まず給与総額を計算すると以下のようになります。
給与は時間数×時給。交通費は出勤日×1日あたり交通費。残業代は法律の規定で8時間を超える場合は25%増しにしなければなりません。よって準社員Dさんの残業代の1時間あたりの単価は1050円となり、それに3時間をかけて残業代を算出します。これで総支給額が算出できます。
残りは控除額を求めていきます。
名前 | 健康保 | 厚生年 | 雇用保 | 小計 | 課税対象 | 所得税 | 住民税 | 控除計 | 差引支給額 | |
1 | 正社員A | |||||||||
2 | 正社員B | |||||||||
3 | 正社員C | |||||||||
4 | 準社員D | |||||||||
5 | パートE | |||||||||
6 | パートF |
このうち健康保険料・厚生年金保険料は金額が決まっています。これは年に1回の算定基礎届けのときに決まります。途中で給与が大幅に変わるとき以外はその金額のままです。ですので、エクセルを使っているときは固定の金額をいれておけばよいです。今回は便宜的にいれておきます。保険料は全国保険協会のHPで調べることも出来ます。一方、雇用保険料は料率が総支給額の0.04%となっていますので総支給額に0.04%をかけて算出します。ちなみに会社負担は0.07%となります。
名前 | 健康保 | 厚生年 | 雇用保 | 小計 | 課税対象 | 所得税 | 住民税 | 控除計 | 差引支給額 | |
1 | 正社員A | 10,130 | 18,182 | 835 | 29,147 | 175,323 | ||||
2 | 正社員B | 14,182 | 25,455 | 1,081 | 40,718 | 222,372 | ||||
3 | 正社員C | 9,623 | 17,273 | 772 | 27,668 | 152,332 | ||||
4 | 準社員D | 5,977 | 10,519 | 465 | 16,961 | 95,389 | ||||
5 | パートE | 0 | 0 | 336 | 336 | 77,264 | ||||
6 | パートF | 0 | 0 | 0 | 0 | 52,070 |
さて、次は所得税です。この所得税計算が煩雑なので自分で計算するというのを困難にしているのかもしれません。所得税は課税対象金額に対してかかります。総支給額より保険料の小計及び交通費を除いた金額が課税対象となります。
国税庁のホームページに電子計算で所得税を計算する方法が公開されています。
〔源泉徴収税額の計算方法〕
その月の社会保険料等を控除した後の給与等の金額Aから、別表第一により算出した給与所得控
除の額並びに別表第二に掲げる配偶者控除の額、扶養控除の額及び基礎控除の額の合計額を控除し
た残額(課税給与所得金額B)を、別表第三に当てはめて源泉徴収すべき税額を求めます。
少し複雑ですが要は課税対象から別表第一で求めた「給与所得控除」と別表第二で求めた「基礎控除等」を差し引いた金額を別表第3にあてはめればよいわけです。
まず別表第一の給与所得控除の額を求めるために以下のようなエクセルの表を作ります。
名前 | 正社員A | 正社員B | 正社員C | 準社員D | パートE | パートF |
以上 | ||||||
0 | 54,167 | 54,167 | 54,167 | 54,167 | 54,167 | 54,167 |
134,517 | 課税対象額×0.4 | " | " | " | " | " |
150,000 | 課税対象額×0.3+15,000 | " | " | " | " | " |
300,000 | 課税対象額×0.2+45,000 | " | " | " | " | " |
550,000 | 課税対象額×0.1+100,000 | " | " | " | " | " |
833,334 | 課税対象額×0.05+141,667 | " | " | " | " | " |
1,250,000 | 204,167 | 204,167 | 204,167 | 204,167 | 204,167 | 204,167 |
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
一番下のカラムの2,3,4,5・・・は後でエクセルのプログラムに使います。実際に数値を代入していくと以下のようになります。
A | B | C | D | E | F | G |
名前 | 正社員A | 正社員B | 正社員C | 準社員D | パートE | パートF |
以上 | ||||||
0 | 54,167 | 54,167 | 54,167 | 54,167 | 54,167 | 54,167 |
134,517 | 70129 | 88949 | 60933 | 38156 | 30906 | 20828 |
150,000 | 67597 | 81712 | 60700 | 43617 | 38179 | 30621 |
300,000 | 80065 | 89474 | 75466 | 64078 | 60453 | 55414 |
550,000 | 117532 | 122237 | 115233 | 109539 | 107726 | 105207 |
833,334 | 150433 | 152786 | 149284 | 146436 | 145530 | 144271 |
1,250,000 | 204,167 | 204,167 | 204,167 | 204,167 | 204,167 | 204,167 |
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
ここで別表第一の控除額を出すにはエクセルのVLOOKUP関数を使います。
一番下の数字は左から何番目かを分かりやすくするためにいれています
例えばAさんであれば比較する数字の行から2番目ですので「2」をいれます。
こうすると例えばAさんの課税対象額は175,323円ですので67597円という給与所得控除の金額をきちんとを返してくれます。
これで給与所得控除額が計算できます。(下表)あと配偶者控除や基礎控除、扶養控除の額も計算しなければなりません。これは簡単で一人につき、31,667円をかけるだけで求めることができます。例えば、Bさんには控除対象になる配偶者と扶養控除の対象になるお子さんが1名いるとします。基礎控除の「1」は誰でも適用されますので3×31667円です。Cさんにも控除対象となる配偶者がいることにして「2」としています。パートのEさんとFさんは一ヶ月の給与が88000円に到達しませんので¥0です。計算してもマイナスの値になります。
名前 | 給与所得控除 | 基礎控除等(31667円×) | 控除額合計 | 課税給与所得額 | |
1 | 正社員A | 67,597 | 1 | 99,264 | 76,059 |
2 | 正社員B | 81,712 | 3 | 176,713 | 45,660 |
3 | 正社員C | 60,700 | 2 | 124,034 | 28,299 |
4 | 準社員D | 54,167 | 1 | 85,834 | 9,555 |
5 | パートE | 54,167 | 1 | 85,834 | 0 |
6 | パートF | 54,167 | 1 | 85,834 | 0 |
最後に別表第三で所得税額を出すために再び別表第一のような表をエクセルで作成します。
名前 | 正社員A | 正社員B | 正社員C | 準社員D |
以上 | ||||
0 | 課税給与所得×0.05105 | " | " | " |
162,501 | 課税給与所得×0.1021-8,296 | " | " | " |
275,001 | 課税給与所得×0.20420-36,374 | " | " | " |
579,167 | 課税給与所得×0.23483-54,113 | " | " | " |
750,001 | 課税給与所得×0.33693-130,688 | " | " | " |
1,500,001 | 課税給与所得×0.40840-237,893 | " | " | " |
3,333,334 | 課税給与所得×0.45945-408,061 | " | " | " |
2 | 3 | 4 | 5 |
これに実際の数値をあてはめると以下になります。
名前 | 正社員A | 正社員B | 正社員C | 準社員D |
以上 | ||||
0 | 3,880 | 2,330 | 1,440 | 490 |
162,501 | -530 | -3630 | -5410 | -7320 |
275,001 | -20840 | -27050 | -30600 | -34420 |
579,167 | -36250 | -43390 | -47470 | -51870 |
750,001 | -105060 | -115300 | -121150 | -127470 |
1,500,001 | -206830 | -219250 | -226340 | -233990 |
3,333,334 | -373110 | -387080 | -395060 | -403670 |
2 | 3 | 4 | 5 |
これに前回のようにVLOOKUP関数を用いると所得税額を出すことができます。住民税は市から月々の税額がきちんと送られてきますので自分で計算する必要はありません。今回は適当な数字をいれておきます。
名前 | 健康保 | 厚生年 | 雇用保 | 小計 | 課税対象 | 所得税 | 住民税 | 控除計 | 差引支給額 | |
1 | 正社員A | 10,130 | 18,182 | 835 | 29,147 | 175,323 | 3,880 | 8,400 | 41,427 | 167,243 |
2 | 正社員B | 14,182 | 25,455 | 1,081 | 40,718 | 222,372 | 2,330 | 7000 | 50,048 | 220,142 |
3 | 正社員C | 9,623 | 17,273 | 772 | 27,668 | 152,332 | 1,440 | 4000 | 33,108 | 159,792 |
4 | 準社員D | 5,977 | 10,519 | 465 | 16,961 | 95,389 | 490 | 700 | 18,151 | 97,979 |
5 | パートE | 0 | 0 | 336 | 336 | 77,264 | 0 | 0 | 336 | 83,664 |
6 | パートF | 0 | 0 | 0 | 0 | 52,070 | 0 | 0 | 0 | 54,770 |
これですべての給与明細が確定しました。